Goodbye My Wings5.5
きっと身勝手な俺に罰があたったんだ。
荒れ狂う海に囲まれた孤高の要塞、アルカトラズ。
そこにシエルが送り込まれて既に数日が経過していた。
ヘリから降りて拘置所に入るとすぐにシエルは持ち物はおろか服も下着も全て剥ぎ取られ、強烈なスプレーによる全身消毒のあと綿密な身体検査を経て配給された下着と黒のタンクトップ、囚人服を身に着けることを許された。
ここではそれまで持っていたものは全て捨てなければならない。
そもそもスパイ行為が露見した時点でシエルは何もかも失ったのだが、こうして自分が身に着けていた下着から一切を捨てられたときはもうお前には人間としての権利も主張もまかり通らぬのだと言われたような気がして愕然とした。
そしてそんなシエルに与えられたのは僅かに四畳ほどの大きさに寝台と毛布を一枚備えた冷たいコンクリートの一室だった。
そこで最低限の食事以外シエルに与えられたものは何もなかった。
(・・・グレイス。)
こうして部屋の隅でシエルには膝を抱えてただ時を過ごすしかない。
ともすればやはりあの屋上でのできごとばかりが思い出されてシエルを苛んだ。
レオンのモニター越しにみたグレイスはかなりの重傷だった。
彼女は全身インプラントで埋め尽くされているのでまだ死んだとは断言できなかったがどのみち政府に抵抗する力は残っていないだろう。。
(俺たちは失敗したんだ・・・。)
グレイスの生死はわからない。
他の工作員やブレラもどうなったのかわからない。
ただ自分たちが計画を完全に失敗したことだけはわかった。
多くの人の命を犠牲にしてきた、フロンティアを危機に追いやった、そして何より大切な人を傷つけた。
ただ自分が歌うために。
(アルトッ・・・!!)
ごめんとシエルが謝ったときのアルトの顔が、シエルの名を呼び続けた声が、あの怒りにも悲痛にも似た叫びがシエルの頭から離れなかった。
(もう何もかも終りだ。)
巻き込んでごめん。騙してごめん。
言いたいことはたくさんあったが、もうアルトとも今度こそ本当に二度と会えないと思うとシエルは目から溢れる涙を止めることができなかった。
ガチャン、と頭上で牢の鍵を開ける音がした。
それに反応してシエルが顔を上げるとそこには看守の男が2人いた。
髭面の中年男を右に、左に小太りの中年よりは少し若いくらいの男が立っていた。
2人とも薄気味悪い雰囲気を醸し出し決して好印象を得られるような人物ではなかった。
「シエル・ノーム、お前の死刑判決が出た。」
そうシエルに死刑宣告したのは髭面の男だった。
男は死を宣告されたシエルが動揺して取り乱れるとでも思っているのだろうか、下品な笑みを浮かべてシエルを見ている。
が、シエルはその宣告に特に心が動かされることはなかった。
(どうせ死ぬ命だ・・・。)
シエルの体は既に病に相当侵されていたのだ。
最近では毎日血を吐いている。
もはや遅かれ早かれ死ぬ運命だった。
今更そこで死刑になろうがシエルにとって大差なかった。
それなのにシエルに死刑宣告した男はにやにやと嫌な笑みを浮かべシエルを品定めするようにべっとりとした視線を送ってくる。
さすがに様子がおかしいともう一人の男にも目を向けると彼もまた同じような視線でシエルを見ていた。
(・・・何だ・・・?)
「お前は死刑判決の意味がわかってないようだな。」
「何だよ?」
下品な笑みを浮かばぜ続ける看守に嫌気が差して下から凄みを利かせて睨みつけると不意に脇腹辺りに衝撃が走り全身が痺れた。
「うっ・・・。」
低い呻き声を上げて髭の男の手もとに目線を向けるとそこには黒い小振りのスタンガンが握られていた。
「生意気な口利くんじゃねぇよ。ここではお前ら囚人なんて飯食らって生かしてもらってる家畜同然なんだよ!死刑囚なんてのはそうやって生きる価値すらねぇって言われた家畜以下の存在なんだ!」
ガンッと視界が上下に揺れたと思うと今度は腹を蹴り上げられていた。
その衝撃にシエルは咳き込み、前屈みに倒れこむ。
そんなシエルの顎を髭の男が掴み上げ、目線を無理やり間近で交差させた。
「だがな、そんな家畜以下の存在にもあの世に行く前に人間様のお役に立てることが一つだけあるんだよ。」
その瞬間いつの前にシエルの後ろに回り込んでいたのか、小太りの男がシエルの手を後ろで手錠で拘束していた。
シエルは体を揺すって必死で抵抗しようとするがスタンガンで攻撃され全身が麻痺しているのに加え、病に侵されたシエルには以前のような力はなかった。
「やめ・・・っろ!」
これから何が起こるのかだいたい予想が付いてシエルが抵抗の声を上げた時、背後の男がばっとシエルのタンクトップを捲し上げた。
そして外気に曝された乳首にあろうことかスタンガンの先が触れた。
「あぁっ!」
その瞬間シエルはびぃんと背筋を仰け反らせて悲鳴を上げた。
「はっ、いい声で鳴きやがる。だがあんまり鳴かれちゃ困るんでな。」
背後から伸びて来た手がシエルの口元に布を詰めた。
「んんっ・・・!!」
布で声が出せなくなったシエルは前の男が更にもう片方の突起にもそれを近づけてくるのを見て必死にいやいやと頭を振った。
「安心しろ、威力は最小に落としてある。ちょうどいいくらいに体が緩んで後々楽になるぜ。」
「うっ・・・ふっんんんん!!」
痛みとともに微妙な痺れが全身を駆け抜けるがシエルの悲鳴はすべて布に吸収される。
男の言う通りスタンガンの威力は最初に脇腹に当てられたときほど強くない。
だからこそじんじんとした熱のわだかまりが乳首に集中してうずうずと体が確かに疼き出していた。
「んっふっ・・!」
今やぴんっと突出したそこを背後の男にきゅっと摘んで刺激されただけで痛みよりも甘い快感がシエルの中を駆け抜けるのがわかった。
そうして前後から散々乳首を玩ばれてシエルの瞳が熱で潤んできた頃、髭の男がスタンガンを手放し、シエルのズボンを下着ごとずり下ろした。
「おまえ乳首だけでそんなに感じるのか?大したビッチだな。」
男のいやらしい笑いにシエルは羞恥のあまり死にたくなった。
(こんなことで感じるなんて・・・!)
「そんな綺麗な面してんだ、相当経験もあるんだろ?」
そう言うと後ろの小太りの男の手によって脚を開いた形で固定され、髭の男が無防備になった蕾につぷりと指を沈めた。
「…んっ。」
(嫌だっ!)
ぐりぐりと中を掻き乱すその指が気持ち悪くて吐き気が込み上げてくるのにスタンガンによって幾分緩んだシエルの襞はそんなシエルの感情とは逆にあっさりと3本の指をそこに受け容れた。
「ふっ・・・んっ。」
こんなところで男たちのいい玩具にされ、玩ばれる自分にシエルは泣きたくなった。
自分はどこまで堕ちればいいのだろう。
ただ歌いたいという思いだけでここまできたのに。
自分はどこで間違ったのだろう。
到底受け容れることができない現実に朦朧とする意識の中でシエルはぐるぐると色んな思いを廻らせた。
「おい、そろそろいいだろ。」
その声を合図にシエルはごろんとうつ伏せに転がされ、髭の男に高く腰だけを持ち上げられた。
背後でがちゃがちゃとベルトを下ろす音が聞こえる。
これから起こることをすぐに察知してシエルは狂ったように逃げようとがちゃがちゃと手錠を鳴らした。
(・・・やめろっ!!)
「んんーっ!!」
ぐっと熱い棒が痛みと共に体内を貫いたのがわかった。
「はっ、やっぱこいつなかなかいいぜ?」
ぱんっと叩かれるときゅっと中が締まり、さらに男の形を感じてシエルは眉を歪める。
スタンガンで緩んだとはいえ充分に慣らされず、潤滑油も塗られていないそこは今の急激な挿入で傷付いたのか沁みるような痛みがシエルを苛んだ。
しかしそんなことはお構いなしに男は欲望のままに抜き差しを開始する。
「そしたら俺も遊んでもらおうかな。」
額を床に押し付け痛みを伴う律動にシエルが耐えていると頭上でそんな声がした。
「っう・・・。」
すると小太りの男がシエルの髪を鷲掴み顔を上げさせ、そこに己の欲望を曝した。
男の指がシエルの口元から布を抜き取ると、シエルが口を閉じる間もなく、そこに肉棒を捻じ込んだ。
「しっかりおしゃぶりしてくれよ。」
そう言って小太りの男はシエルの頭を固定し、奥までそれを突っ込む。
「ぐっ・・・んふっ・・・んん」
深すぎる挿入に嘔吐感が込み上げ、吐き出そうと必死で舌を動かすのが、それがそれと知らずに男に快感を与えて逆効果になっていた。
「ふっ、お前上手いな。」
後ろからも身体全体を動かすような突き上げ方をされ、その衝撃で前のものにも自然とシエルは奉仕する形になっていた。
「んっ・・・ぐぅ・・・ふっ・・・」
口の中のものが一際大きくなると、男は己のものを抜きとりくぐもった声を上げるとシエルの顔面に欲望を撒き散らした。
「いい面してるぜ。」
行為の残酷さにシエルが呆然としているにも関わらず、小太りの男はシエルの前髪を掻き揚げてニヤリと笑う。
「おい、こっちも忘れるなよ。」
そういうと後ろの男も性急な突き上げてラストスパートをかけて深くシエルを貫いた。
「ひっ・・・!」
ひゅっと喉を言葉にならない悲鳴が通るとシエルの中に男の欲望が吐き出された。
つーっと受け入れきれずに溢れ出てきた精液が内股を伝う感覚にシエルはとてつもない不快感を感じた。
「あ・・・。」
今までだって色んな人間とセックスしてきた。
相手の要望によっては相当マニアックなものにも応えてきた。
だが今ほどシエルに不快感と屈辱感、絶望感を与えたものはなかった。
これまでは曲がりなりにもシエルの意志があり、理由があった。
だがここで犯されたシエルには意志も理由もない。
ただ男たちの性の吐け口にされる自由も人権もない、家畜以下の存在として扱われた。
そのことがシエルのプライドを大いに傷つけていた。
「じゃあ、今度は交代だな。」
コンクリートの冷たさを頬で感じていると頭上からそんな声がしてシエルは懇願するような目で男達を見た。
「・・・や、めて・・くれ。」
「”やめて下さい”だろうが!」
腹にガンッと激しい衝撃とともに男の足が食い込む。
もはやシエルは悲鳴を上げることすらできず、彼らの暴力に耐えるしかなかった。
これ以上、自分は、自分の心はどこまでぼろぼろにされれば終わるのか。
シエルが虚ろな視線を男たちに向けたとき不意に鋭い怒声が監獄の中で響いた。
「貴様らここで何をしているっ!?点呼時間はとっくに過ぎいるぞ!」
「ひぃ!レオン補佐官殿!」
「職務怠慢且つアルカトラズ内の風紀を乱したとして罰せられたいのか?」
突如現れたレオンに凄まれ、看守たちは驚きと恐怖でシエルを拘束していた手錠を外すと脱兎のごとくその場を去った。
「大丈夫か?」
手が自由になっても精神的ショックと肉体的ダメージで動けずに床にうずくまったままのシエルの頭上でレオンの声がした。
「・・・レオン?」
重い頭を持ち上げるとレオンは片膝を付いてシエルに手を差し出していた。
「全くここの看守たちは野蛮で凶暴な奴らだな。もっと教育するよう上にも言っておかねば。」
看守に悪態を付く様子からシエルへの気遣いを感じてシエルは自然と胸に染み入るものを感じた。
レオンとはギャラクシーに居た頃からの知り合いだ。
自分はレオンを騙していた存在なのにこうして自分を助けてくれたレオンの手をシエルは気づけばとっていた。
「・・・ありがとう。」
もう一人ぼっちだと思っていた。
そんな自分に差し出してくれる手があるなら、今のシエルはそれに縋り付くような思いでレオンに礼を言った。
「気にすることはない。君がここでの残りの生活を少しでも快適に遅れるように取り計らってみよう。ここでは死刑囚なんて看守どものストレス解消の道具としてめちゃくちゃにされるだけだが、君にはそんなことさせないさ。」
シエルの手を握り返して熱心に喋るレオンにシエルは涙腺が緩んだ。
そして今までの非礼も全て謝ろうと口を開いたとき、レオンに捕まれた手が捻り上げられた。
「・・・いっ・・・!!」
苦痛に眉を歪めると不敵に笑うレオンと目が合った。
「と、でも言うと思ったか、この売女。」
その瞬間全身から血の気がさーっと引くのをシエルは感じた。
騙されたのだ。
「シエル、貴様は看守たちの言うとおりヤられるしかない家畜以下の存在だよ。」
はははっと声を上げて笑うレオンにシエルは怒りで唇を戦慄かせた。
「・・・騙したな?」
「騙した?君がそんなことを言える立場か?俺を騙し、フロンティア市民を騙し、早乙女アルトを騙したのは君じゃないのか?」
早乙女アルト。
その名を聞いた瞬間シエルは言葉を詰まらせてそれ以上何も言えなくなった。
そうだ、フロンティア市民もアルトも、みんなシエルが騙して欺いて、傷つけたのだ。
「男に尻を差し出すしかない売女が銀河の帝王とはな!とんだ茶番だよ!」
レオンの言う通りだった。
銀河の帝王なんて嘘っぱちだ。
シエルはただ対バジュラ作戦用の道具で、しかも不完全であるためホンモノが現れるまでの代変品。
(・・・歌で銀河を震わせる・・・?そんなことできる訳がない。)
「精々死ぬまでの間私を満足させてくれたまえ!」
「・・・うっ!!」
そう言うとレオンが一層強くシエルの手を捻り上げた。
(俺は・・・もう・・・!!)
「んんっ・・・!!」
生きていても仕方がない。
どうせ死ぬのに、死ぬまでの間レオンに好きなようにされるのなら今すぐ死にたかった。
その思いで奥歯に力を込めようとした瞬間口内にレオンの指が突っ込まれた。
口の中にじんわりと鉄の味がして、それを吐き出したいのにレオンの指は無意味にシエルの口内を荒らした。
「死のうとは思うな、シエル。お前がここで自殺でもしてみろ。私は君が懇意にしている早乙女アルトに適当な罪を擦り付け、今度は彼をここに送り込むぞ。」
「ぐっ・・・!」
(卑怯だ・・・!!)
早乙女アルトを掛け合いに出すなんて。
シエルは怒りとも悲しみともとれる涙を流して全身の力を抜いた。
もうシエルには何も残されていなかった。
ただダークブルーの髪を揺らす愛おしい人の存在を眼に浮かべて、性急に取り出されたレオンの欲望をそこに受け容れるしかなかった。
(・・・アルトッ!!)
何度も君の名を切り離されそうな意識の中で呼んだ。
to be continued...
あとがき
際どいセリフ多くてすみません;
言葉攻めってどうしてもこんなんなる。
刑務所ってったらこんなんしか思い浮かばん私商業誌の読みすぎ・・・^p^
[23.03.2011]